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公安刑事5

公安刑事5.

 公安刑事と父はどんな話をしていたのだろうか。この時私は長年の疑問が解消された。八路軍の話をしていたのである。八路軍とは現在の中国人民解放軍のことで戦前の国共合作時代、蒋介石の指揮下にあった国民革命軍第八路軍の通称名である。戦後の国共内戦で八路軍は人民解放軍に改称されたが、戦前の軍隊経験者は中共軍のことを通りの良い八路軍と呼んだ。

 公安刑事というのは監視対象者に何のため接触するかというと情報を得るためである。父の場合で言うと所属する日本共産党の組織情報を得るため、定期的に訪問していたと思われる。父は刑事の訪問を嫌がっている風でもなく、まあ適当に世間話をしながらしだいに八路軍は軍紀が厳正で人民のものを取ったりしないとか、針一本借りてもちゃんとお礼を言って返すとか、民家に止まるときは戸板をはずしてそれをベッドにして土間に寝るとか、水は貴重で朝起きると何百メートルも離れた井戸にいって水を汲みカメを満タンにするとか、まあ八路軍の宣伝ばかりしていた。

 刑事はおそらく八路軍の昔の話より日本共産党の話を聞きたがっていたに違いない。しかし父も組織の人間であるからスパイをするようなことは戒められているので、おしゃべりな父と言えどもぺらぺらしゃべったりしない。それで公安刑事がうちに来ると、いつもいつも八路軍の話ばかりしていた。公安もさすが然る者「ハァーそうですか。ヘーすごいですネェ」とかいって歓心を買う。私はいまでもこのときの刑事の表情を覚えている。まさか刑事はこのとき傍にいたニキビ面が監視していたなんて知らなかっただろうな・・・

続く

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