« 元海上保安官が尖閣ビデオ流出で講演 | トップページ | 中国とどうつきあうかー神戸新聞の記事より »

北方領土4島返還の幻想

 2月25日、読売テレビのウエークで「緊急激論”北方領土”が危ない前原外相に生直撃!強引ロシアにどう対抗」のはでな番組見出しに引かれてみました。

 結局ロシアでの外相会談は何の進展もなく、何の対抗措置も取れないことがわかりました。最近の原油価格高騰で、中東にあまり依存せず、ロシア産の原油輸入の増大をはからなければならないことから、菅総理も「許しがたい暴挙」と振り上げた拳の収めどころを失った感じです。

 出演した森本敏氏はメドベージェフ大統領が今後日本とは「領土交渉はしない」と言っているのを「本気かどうかわからない」と言う始末で日本の対米追随者の有識レベルが見透かされます。韓国や中国に投資を呼びかけ、自らインフラ整備に乗り出し、軍備も増強すれば、本気だという事はハッキリしている。

日本政府は国際的に見て全く返る可能性のない国後・択捉の返還を外交の重点にしてきたことを反省する時期。国民も又事実を直視する時期。(繰り返す):(1)ポツダム宣言で日本は「本州、北海道、九州及四国竝ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」 受諾。本州等の他は「吾等ノ決定スル諸小島」で連合国側が日本の物と言わない限り日本の物ではない。(2)サンフランシスコ条約では千島を放棄。吉田首相はこの会議で国後択捉南千島と位置付け。この時点で日本は国後択捉に関する「権利、権原及び請求権を放棄」(3)日本が放棄した国後択捉がどうなるかは連合国内部の問題。それは米国とソ連(ロシア)の問題。ルーズベルトは千島をあげる条件でソ連の参戦を要請。ルーズベルト、トルーマンは千島をソ連に約束帰属がどうなるかは連合国間の問題。米国はヤルタ会談でソ連の対日参戦を要請。その見返りにルーズベルト北方領土をソ連に渡す約束。米国は戦後国後択捉を有していることに抗議を申し入れていない。国後択捉の南千島は日本固有の領土論はサンフランシスコで認められなかった議論。    孫崎享ツイッターより

 孫崎氏のように事実をきっぱり言う元外交官はいませんね。日本の知識人というのは領土問題になると「売国奴」といわれるのを恐れて何も言わない、勇気が無い。千島列島の帰属問題というのは連合国の問題であって、放棄した日本は当事者では無いというのが、冷徹な現実です。それでもフルシチョフ政権が日本の実力を評価して1956年に鳩山政権と歯舞・色丹2島返還で合意しかけたとき、ダレス米国務長官は、日本は放棄した千島列島をソ連に引き渡す権利をもっていない、そういうことをするなら沖縄を併合すると言って脅かした。

 北方領土5(参考)1956年日ソ交渉で領土を画定しようとした際の米国反応。1956年9月7日「日ソ交渉に対する米国覚書、「日本は「サ」条約で放棄した領土に対する主権を他に引き渡す権利を持っていない。。。かかる行為に対してはおそらく同条約によって与えられた一切の権利を留保と推測北方領土6(参考2):1956年8月19日、重光外相ダレス長官を訪問し、日ソ交渉の経過を説明。ダレス長官は、“日本側がソ連案を受諾(千島列島をソ連の帰属)することは、米国も沖縄の併合を主張しうる立場に立つわけである”と発言。後々これは関係者間でダレスの恫喝と言われる 孫崎享ツイッターより

 アメリカは戦後ソ連と冷戦に入ったので、日ソが仲良くすることを許さなかった。それ以後日本は4島返還を主張するようになる。日本は第二次大戦でソ連が日ソ中立条約を破ったことと、60万関東軍兵士をシベリアに抑留した事で、自分が被害者になったような錯覚をしている。戦後長い間、ソ連は火事場泥棒であると非難し続けた。確かに火事場泥棒であった。シベリア抑留はポツダム宣言違反である。しかし戦前の大日本帝国は良い子ちゃんだったのか。

 第一次大戦で中国のドイツ租借地、青島を攻撃したのは火事場泥棒ではないのか。ロシア革命の時に他の帝国主義諸国と干渉派兵をして、その後4年間もシベリアに居座ったとき領土拡張の野心が無かったのか。蒋介石が江西省の共産党根拠地を攻めて余力が無いとき、満州事変を引き起こしたのは、火事場泥棒ではなかったのか。ヒトラーが独ソ不可侵条約を破ってソ連に侵攻してモスクワも危うしとなったときに、満州に70万の大軍を送り(関特演)極東ソ連軍を牽制したのは、挟み撃ちにするつもりだったのか。ヒトラードイツがフランスを破りビシーかいらい政権ができたとき、北部仏印に進駐したのは火事場泥棒で無かったのか・・・

 北方領土問題というのは対ロシア一国だけの問題だけではなく第2次大戦時の連合国と枢軸国の関係が複雑に絡み合っている。その後米ソ冷戦でアメリカが介入し続ける事によって、北方領土が遠のいたり近づいたりする幻想を日本が持つようになった。海部元首相がインタビューで自分が首相の時に4島が一番近くなったと誇らしげにしゃべっていたが、蜃気楼ではなかったのか。

 戦後アメリカは日本が中国やソ連と仲良くしないように工作し続けてきた。冷戦のときはソ連が攻めてくるといい、現在は中国が攻めてくると脅かしている、そのせいか政党でいえば共産党から自民党、民主党まで領土問題では足並みを揃えて、挙国一致だ。共産党なんか北千島も含めた全千島の返還を要求している。この前「チャンネル桜」を見ていたら水島キャスターが、共産党の全千島要求を誉めているのでビックリしました。「週刊金曜日」で本多勝一もロシアを「侵略者」と罵倒していました。しかし政治レベルで挙国一致でも外交は全く進まない。やはり戦後半世紀以上国民に幻想を振りまいてきた外交当局が間違っていたのではないだろうか。

 番組の最後に、「北方領土がもしロシアのものとなったら」尖閣も、沖縄も取られてしまうと、自衛隊の元幹部である志方俊之氏にアジらせていた。この設問自体、欺瞞的ですね。すでに65年以上ロシアのものになっている現実から目をそらしている。番組では町の市民に北方領土のことを聞いていたが、ほとんどが無関心のようだった。私はこの無関心さが、領土問題に対する国民の声なき批判のように思える。 

« 元海上保安官が尖閣ビデオ流出で講演 | トップページ | 中国とどうつきあうかー神戸新聞の記事より »

尖閣問題・領土問題」カテゴリの記事

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1349367/38928776

この記事へのトラックバック一覧です: 北方領土4島返還の幻想:

« 元海上保安官が尖閣ビデオ流出で講演 | トップページ | 中国とどうつきあうかー神戸新聞の記事より »

2017年5月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ