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中国とどうつきあうかー神戸新聞の記事より

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 3月2日の神戸新聞6ページに前中国大使の宮本雄二氏と評論家松本健一氏の「争論」が載っています。私は最近両者の著作を読んでいたので、興味深く読みました。

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 松本氏は「漁船衝突事件」での中国の強硬な態度を、日露戦争当時の日本と比較。高まるナショナリズムが強硬な態度をとらせていると分析している。日本の態度について、「2年前自民党政権時代に領海侵犯した漁船の船長を逮捕するマニュアルを作っていたので、その通り菅首相と前原外相が逮捕して国内法で裁くという態度をとったが、仙谷官房長官が外交問題を処理するマニュアルが無かったのでまずいと思った」と述べている。

 松本氏は大変重要な事をいっている。2年前に領海侵犯した中国漁船を拿捕する方針に日本は転換したと。元外務省の孫崎氏などが言っている、鄧小平以来の「尖閣領土問題棚上げ」から違法漁船をドンドン拿捕する実効支配強化に変わったのなら、なぜ「公務執行妨害」で逮捕したのか?ということだ。田中康夫議員が言ったように、堂々と領海侵犯あるいは不法漁業で逮捕すればよいのだ。逮捕容疑は挑発して、体当たりしてきた。「悪質だから」捕まえたと前原外相は言っていた。外国人漁業規正法で追起訴したのは、元保安官を起訴猶予にして、ビデオ流出事件が終わってからだった。

 私は「漁船衝突事件」は中国漁船が「体当たり」したのではなく、巡視艇が当たるように仕向けて拿捕したと考える。あの「ビデオ」は編集された政治宣伝映画である。松本氏が「中国が強硬」に見えるのは多くの日本人同様、事実から出発していないからだ。強硬なのは日本であると理解できないのは漁船が体当たりしてきたと思っているからだろう。ほとんどの人はネットに流出したビデオさえまともに見ていない。そこからさらに切り取った数十秒のシーンをみて「体当たり」だと思っている。

 宮本雄二氏は「船長を逮捕し、日本の法的な手続きに乗せれば、確実に重大な外交問題になるという見通しは持っていたはずだ。早期に外交問題化を回避する余地はあった。日中の相互理解がまだ足りない」と日本の「船長逮捕」を批判している。インタビュアーの「中国は外交姿勢を強硬化させたのでは」との問いに「1840年のアヘン戦争以来の歴史的な体験により、中国人は外の世界に猜疑心を持っている」と指摘また米国など先進諸国はあらゆる機会を狙って中国の政権を崩壊させようとしていると信じているので、軍事的に包囲されていると感じている。経済大国になったので、必要とする資源エネルギーが大きい、そのことから資源確保に強い願望が出てきたと、現在の中国を分析している。「覇権国家になる恐れはないのか」との問いに、中国にはタカ派軍人だけでなく、国際協調を主張するさまざまな考えの学者もおり、心配することはない「パワーポリティクスを越えて王道政治、王道外交の道を歩みうると」答えた。私は宮本氏の主張におおむね賛成する。宮本氏は中国をよく理解している。彼が大使を交代せずに続けていたら「漁船衝突拿捕事件」はここまで悪化しなかっただろう。

 日中関係は1930年代に似てきたという見方について「日中戦争の時代、日本の政府・軍は中国の強い民族主義について、等身大の理解ができずに対応を誤った」今はある程度理解していると述べ、最後に「日中は共に大国であり引越しはできない隣国。この大国関係をより安定し、予測可能なものにしていくことは、間違いなく日本および中国の絶対的な国益だ、両国の相互理解を促進し、戦略的互恵関係を強化していくべきだ。今年の辛亥革命100周年、来年の日中国交正常化40周年は好機だ。両国民が相手を等身大で見る状況をいかにしてつくるか、記念行事の大きな目標であるべきだと思う」と締めくくった。

 私が宮本氏の言葉で一番印象に残ったのは「両国民が相手を等身大に見る」というところです。現在の日本人は中国を人食いざめジョーズのような怪物に見ている。相手は自分達と同じ人間である。この当たり前の認識が欠けている。また松本氏の日中は「ナショナリズムをこえてアジアのアイデンティティーをともに考えていくべきだ」というのは賛成です。しかしこのインタビューで触れられていないこと、松本氏の持論である「東アジア共同体創設」の最大の「妨害者」アメリカの存在です。日本外交は「アメリカ問題」しかない。この問題を二人の識者に一番聞きたかった。 

 この記事には、下段に二人のインタビューのまとめが載っている。事件から半年が過ぎ熱狂から冷めたのか、共同通信編集委員の森保宏氏は「中国が民主的で国際社会と協調できる大国になるよう辛抱強く働きかけるべきだ。両国メディアは国民のナショナリズムをあおりがちだが、より冷静で正確な報道を心掛けていきたい」と最後に書いているが私は大手マスコミ各社に、この言葉の確実な実行を望みます。

 

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