« ただっきゃのおばちゃん | トップページ | 忠ならんと欲すれば孝ならず »

平瀬さん(3)

ロボット三等兵

平瀬さんが我が家を訪ねてきても、たいてい父はいなかった。父が帰ってくる間、延々と待ち続ける平瀬さん。当時の6畳一間のわが家ではテレビもなければラジオもない、財産らしきものといえば真新しい洋服箪笥がでんと鎮座しているだけ。私は、いつも父を待ち続ける平瀬さんが気の毒で、私の愛読雑誌少年クラブをネタに話し相手になった。というより遊んでもらっていた。

昭和30年代前半は子供むけ雑誌も月刊がまだまだ全盛で、少年クラブ、少年画報、冒険王、おもしろクラブなどが、少年たちの夢をかき立てていた。その中で父も戦前読んでいた、少年クラブは年一回、正月特大号だけ私は買ってもらえた。それ以外の月は貸本屋で借りるほかなかった。そこで連載されていた、ロボット三等兵は私の一番のお気に入りだった。舞台は支那事変から始まり、太平洋戦争で終わる。私は戦争というものをこの漫画で初めて知った。

軍隊の階級とか、部隊の簡単な編成はいつも読むうちになんとなくわかるようになり、5年生ぐらいになると、東京の大学に通っていた年長の従兄弟が持っていた「丸」というバカ高い軍事雑誌をコソっと読むようになっていた。

話を平瀬さんに戻すと、私は平瀬さんが描くロボット三等兵の似顔絵が大好きで、いつも頼んで描いてもらっていた。今思い出すとこのギャグ漫画はよくできていて、前谷惟光自身が経験したと思われる帝国軍隊の理不尽さが子供でも分かるようにおかしく描いてある。たとえばインパール作戦を指揮した牟田口司令官なんて子供心にひどい指揮官だと思えたし、日本の軍隊が食糧をろくに確保せず戦争をしていたのもよくわかった。

今でも覚えている話がある。連隊長がトンカツを食べたいとロボット三等兵に命令する。そんな材料はないので革靴の底を柔らかくなるまでグツグツ煮てそれを衣をつけてあげたのを連隊長に出すという筋書きで連隊長は美味そうに揚がったとんかつを一口食べて・・・ 

その漫画に出ていたとんかつが、それはそれはおいしそうで、母にトンカツを食べたいと言うと、「そんな高い材料買う金がない」と却下。それなら自分で作るからと、いらない革靴をもらって漫画と同じように、電気コンロに鍋をかけ革靴を切ったのをトントン叩いて柔らかく?したのを入れてグツグツ煮た。

母はあきれていたが、まあやりたいようにさせてくれ、それでいくら煮てもやわらかくならないので、ようやく私はあきらめました。ちなみに私が初めてトンカツを食べることができたのは中学生ぐらいの時で、その頃父は肉の商売をやるようになっていた。

« ただっきゃのおばちゃん | トップページ | 忠ならんと欲すれば孝ならず »

父の思い出」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1349367/69735023

この記事へのトラックバック一覧です: 平瀬さん(3):

« ただっきゃのおばちゃん | トップページ | 忠ならんと欲すれば孝ならず »

2017年5月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
無料ブログはココログ